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緊急救援活動の終了に伴い、募金活動を終了させていただきます。ご支援誠にありがとうございました。(2006/12/12)

* 活動終了報告をアップいたしました。詳細はこちらをご覧ください。(2007/3/13)

 
 ●ディリにおける国内避難民および地域住民への医療・保健支援事業

本事業の目的は、首都ディリの避難所で避難生活を送る人および地域住民の健康状態を改善すること、予防可能な疾患を予防するための知識を普及させ、その蔓延を防ぐことです。

事業実施にあたっては、東ティモールで診療経験のある日本人看護師の長期派遣と医師の短期派遣を通じて、バイロピテ・クリニックと協力しながら、巡回診療活動や健康相談を実施します。また、当会の現地人スタッフを中心として、避難民へ保健教育を行います。

  【活動国】    東ティモール
【支援対象者】 一般住民
【支援分野】  保健医療
※ バイロピテ・クリニック
1999年に、米国人のダン・マーフィー医師によって設立された私設の無料診療所。
シェアでは、1999年の独立をめぐる一連の暴動後、首都ディリにあるバイロピテ・クリニックと協力し、診療、医薬品提供、巡回診療、医学生へのトレーニング等の支援を行いました。
今回の騒乱に関しても、バイロピテ・クリニックと協力し、医師派遣による巡回診療支援、医薬品や医療器具の提供、巡回診療用の車両貸与等の支援を既に行っています。本事業ではカウンターパートとして共に活動を実施していきます。
◆支援活動終了のご報告

1.背景

2002年に独立(主権回復)した新国家東ティモールは、国連および各国からの援助を受けながら国づくりを進めてきました。しかし、2006年3月に国防軍全体の3分の1にあたる約600名の兵士が解雇されたことを発端に国防軍と除隊兵士の対立が激化、5月に入ると国家警察や若者集団を巻き込んで、ディリ市内では銃撃戦にまで発展しました。

これ以降、東ティモールは内乱状態に陥り、多くの家が焼き討ち・破壊され、およそ15万人の国内避難民が出るに至りました。ディリ市内および近郊では、約8万人の国内避難民が66箇所もの避難所で生活することを余儀なくされました。

避難所では人口が過密しているにも関わらず、衛生施設が整っていないため、避難民は劣悪な衛生環境のもとで避難生活を送ることになりました。また、騒乱の影響で物流が途絶えたため、ディリ市内は一時的に深刻な食糧不足に陥り、特に避難所で暮らす子どもの栄養状態が悪化しました。
 

NGO・CAREと共同で避難所にて栄養の
デモンストレーションを用いた保健教育実践

NGO・CAREと共同で避難所にて
栄養ゲームを用いた保健教育実践

NGO・Health Netのスタッフへの保健教育トレーニング実施

衛生環境が劣悪であること、栄養状態が悪いこと、長期化する避難生活で精神的なストレスを抱えていることから、抵抗力の低下した多くの避難民が様々な感染症に罹患しました。9月に発表された東ティモール保健省の調査結果によると、ディリ市内および近郊の避難所で多い疾患は、上気道感染症44%、皮膚疾患6%、急性下痢症6%、マラリア疑い6%、外傷3%となっています。

保健医療のニーズが高いにも関わらず、避難民は休職中で現金収入がないことや治安が不安定であること等から、医療施設へのアクセスが困難で罹患しても十分な保健医療サービスを受け難い状況にあります。

このような状況の中、当会は医師、看護師、保健ワーカー等を派遣し、避難民の健康状態を改善するため、カウンターパートであるバイロピテ診療所と共に、避難所内で罹患している患者への診療活動や健康相談を実施しました。また、避難民自らが予防可能な疾患に関する知識を得て、避難所内での病気の蔓延を防ぐことができるよう、バイロピテ診療所や国連機関、他のNGOと共に保健教育活動を実施しました。

なお、当会は、1999年に東ティモールが緊急事態に陥った際にもバイロピテ診療所と協力しながら医療支援を行った経験を有しています。

2.事業サイトおよび事業期間

東ティモール国内避難民の支援に関しては、支援の重複を避けるために複数の国連機関やNGOから成るネットワーク、Site Liaison Support(以下、SLS)が担当地域を振り分け、各避難所の支援調整を行っています。

医療・保健分野に関しても、週に一度のヘルスプロモーションコーディネーション会議、隔週のヘルスコーディネーション会議が開かれ、SLSを中心に東ティモール保健省や国連機関、NGO間で活動調整が行われており、それぞれの活動内容および活動地域はこの調整によって振り分けられています。

当事業開始直前まで、バイロピテ診療所の管轄地域は、ダレ地区のレラウス避難所、バリバル避難所、ダレ修道院(避難所)であり、当プロジェクトも上述の避難所で暮らす人々や周辺の地域住民を対象としていました。しかし、ダレ地区近辺の保健センターが通常通り機能するようになったこと、テント生活を送る避難民がいなくなったこと、よりニーズの高い地域での活動が求められていることから、上述の活動調整によりバイロピテ診療所の管轄地域が変更されました。

当事業開始以降、ダレ地区で活動を行う代わりに、当会はカウンターパートであるバイロピテ診療所の管轄する、よりニーズの高い他地域で活動を行っていくことになりました。当事業で活動を実施した避難所を表1に示します。

また、当初は診療を主とした活動を予定していましたが、上述の活動調整により、避難所での診療活動は保健省直属の保健スタッフやキューバ人医師が主に担当し、その他の国連機関やNGOには診療以外のヘルスプロモーション活動が求められたことから、当会は健康相談、保健教育を中心に活動を展開していくこととなりました。

 
  <表1: シェアが活動を行った避難所名および避難所の規模>

避難所名

避難民数
避難所名
避難民数
メティナロ避難所
6,644
メティアウト避難所
128
バイロピテ診療所
20
バリデ教会
1,081
ジャルディン避難所
2,283
バリデ神学院
2,011
モタエル教会
2,068
レシデレカノッサ修道院
874
CRS
240
サンジョゼカレッジ
860
ファロール小学校
111
ベコラ教会
3,989
芸術学校
138
ベコラカノッサ修道院
1,350
警察学校
965
バリデサレシアナ修道院
1,895
CARE事務所
204
バリデカノッサ修道院
9,800
ファトゥメタ神学院
2,712
中央薬局
3,031
*2006年8月時点での避難民数(データはIOMより入手)
 
事業期間については、当初、2006年8月8日から2007年2月7日までの6ヶ月間を予定していましたが、終了日を2006年12月31日へと変更しました。この理由としては、雨季に入ると避難所での生活がより困難になると予想されることから、それぞれの出身地に帰省する避難民も出てきてディリ市内および近郊の避難民数が減少傾向にあったこと、また当事業のカウンターパートであるバイロピテ診療所や協力関係にあるNGO等のスタッフが、単独で活動を実施する能力を培ってきたこと等が挙げられます。
 

シェア開発のフリップチャート教材を
用いた栄養に関する保健教育実践


メティナロ避難所への巡回診療に参加した樋口医師

メティナロ避難所での巡回診療時に
公衆衛生の保健教育を実施

メティナロ避難所への巡回診療


メティナロ避難所への巡回診療にて
外傷の処置にあたる成田看護師

3.事業内容詳細

主な活動としては、ディリ市内10箇所の避難所への巡回保健教育活動、メティナロ避難所での診療・健康相談・保健教育活動、バイロピテ診療所での診療・健康相談・保健教育活動支援、他の支援機関・団体との連携が挙げられます。以下、詳細について述べます。

(1)巡回保健教育活動

8月下旬に開催されたヘルスプロモーション会議での協議の結果、避難所で多く見られる疾患や雨季に急増すると予想される疾患に関して、各避難所でヘルスプロモーション活動を実施していくことになりました。当会は国際NGOのCAREと合同で、CAREが管轄する10箇所の避難所で巡回保健教育活動を行いました。対象となった避難所は以下の通りです。

・バリデ神学院 ・サンジョゼカレッジ ・バリデ教会 ・ベコラ教会 ・ベコラカノッサ修道院 ・バリデサレシアナ修道院 ・バリデカノッサ修道院 ・ファトゥメタ神学院 ・中央薬局 ・CARE事務所

この活動では、避難所の衛生環境が劣悪であること、栄養状態が悪いこと、また雨季には下痢やマラリア、デング熱といった感染症が急増すると予想されることから、公衆衛生、栄養、下痢、マラリア、デング熱の5つのトピックに焦点を当てました。保健教育活動実施状況は以下の通りです。

実施回数: 計46回  受講者数: 計560名
保健教育トピック(実施回数): 公衆衛生(8回)、栄養(8回)、下痢(10回)、マラリア(10回)、デング(10回)

CAREスタッフの保健教育実施能力が向上するよう、当会がOJT(実地研修)的に保健教育活動を実施したのも、この活動の特徴です。

(2)メティナロ避難所での診療・健康相談・保健教育活動

メティナロ避難所はディリの東方約20キロに位置し、活動開始当初、避難民数は6千人を超える規模でした。他の避難所と同様、同避難所でも保健省に直属の保健スタッフやキューバ人医師が診療・健康相談活動を担当することになっていましたが、実際には十分な医療サービスが提供されているとは言い難く、活動調整の結果、バイロピテ診療所が週1回、土曜日に巡回診療を行うこととなりました。

当会は日本人医師1名および看護師1名を派遣し、バイロピテ診療所と共に診療・健康相談・保健教育活動を行いました。活動の実施状況は以下の通りです。

【診療・健康相談活動】
活動回数: 計12回
診療者数: 計1,227名(男性588名、女性639名)
疾患別割合:
   
【保健教育活動】
実施回数: 計6回
受講者数: 計101名
保健教育トピック(実施回数): 皮膚病(2回)、栄養(1回)、結膜炎(1回)、虫歯(1回)、風邪(1回)

(3)バイロピテ診療所での診療・健康相談・保健教育活動支援
 

バイロピテ診療所には現在3名の医師が勤務し、これに加えてボランティア活動として短期間医療支援を行う医師が海外から数多く出入りしています。しかし、3名の医師のうち2名は他地域への巡回診療や避難所でのヘルスプロモーション活動も担当しているため、診療所に常駐し診療活動を行う医師は1名のみです。

1日に約300人もの患者が訪れる同診療所では、医療従事者が慢性的に不足していますが、今回の騒乱に際しては、その中心地から近かったため、患者数はさらに増えました。

そこで当会は看護師1名を派遣し、診療・健康相談・保健教育活動支援を行いました。この診療所にはディリ市内で避難所生活を送る人々も数多く訪れるため、当活動は避難所内で抱える健康問題を分析し、それに対応するための保健教育活動のあり方を考察する機会も兼ねました。

また、東ティモールの出生率は女性1人あたり7.8人と世界一高く、避難所でも多くの妊娠・分娩・産褥期の女性が劣悪な環境の中で避難生活を送っていることから、妊産婦に対するヘルスプロモーション活動の重要性が高いと言えます。

当会は助産師1名を派遣し、同診療所助産師を対象に、助産、妊婦の産前/産後ケア、新生児ケア、保健教育活動における能力向上を狙いとしたトレーニングを実施しました。

バイロピテ診療所では、必要な医薬品は通常、保健省管轄の中央薬局から入手していますが、今回の一連の騒乱で同診療所内や巡回診療先での患者数が増加したことから、一時的に医薬品が不足しました。そのため、当会は自己資金で医薬品と慢性的に不足している医療器具を調達、提供しました。医薬品、医療器具は表2の通りです。

 
<表2: 当会がバイロピテ診療所に提供した医薬品および医療器具>

医薬品

数量
医療器具
数量
解熱鎮痛剤 アスピリン
1,500錠(300名)
血圧計
4ヶ
ビタミン剤 ビタミンK
400本(400名)
聴診器ダブルスコープ
5ヶ
栄養補給剤 ジンク(亜鉛)
1,000錠(100名)
聴診器ナーススコープ
2ヶ
栄養補給剤 カリウム
3,600錠(3,600名)
パルスオキシメーター(酸素飽和度計)
2ヶ
ビタミン剤 ビタミンB
47,000錠(9,400名)
体温計
5本
         ペンライト
3本
*医薬品の数量の括弧内は受益者数を示します。
 

バイロピテ診療所の待合所にてパネルシアターを用いた
公衆衛生の保健教育実践

結核の劇を通じたヘルスプロモーション活動

避難所のテントを周って結核に関する
ヘルスプロモーション活動を実施

ユニセフによる避難所における栄養失調児に
関する調査に協力:体重測定


ユニセフによる避難所における
栄養失調児に関する調査に協力:身長測定

(4)他の支援機関・団体との連携

当事業を実施するなかで発生した、他の支援機関・団体との連携を通じた2つの活動について、以下に述べます。

【結核に関する健康相談・保健教育活動】


結核は東ティモールで多く見られる疾患の一つであり、罹患すると治療に8ヶ月を要するので治療中断者も多い。また治療を中断すると結核菌が耐性化し、治療薬は効かなくなる。

今年5月の騒乱は治療中断者の増加を助長したと言われており、避難所での結核蔓延のリスクは高く、結核対策のニーズは極めて大きかった。8月に開催されたヘルスプロモーション会議でも、避難所には結核を患っている疑いのある人が数多くいると報告されたため、協議の結果、当会はバイロピテ診療所およびNGOのPlan、Health Netと共同で、5箇所の避難所で結核に関するヘルスプロモーション活動を実施した。対象となった避難所は以下の通りである。

・ジャルディン避難所 ・メティナロ避難所 ・モタエル教会 ・CRS ・ファロール小学校

活動の流れとしては、まず、Plan、Health Netのスタッフを対象に、結核に関する保健教育実施能力向上を狙いとしたミニトレーニングを行い、その後、各避難所で保健教育を実施した。保健教育活動実施状況は以下の通りである。

実施回数: 計5回
受講者数: 計92名

また、避難所内のテントを個別に周ってインタビューを実施し、結核疑いのある人をリストアップして、近隣の保健センターに行くよう患者本人やその家族に促した。後日、リストアップされた人達が保健センターにアクセスできたかどうかをモニタリングし、さらに、結核疑いのある人が多い避難所には、バイロピテ診療所から医師の巡回診療ができるよう調整した。

その結果、5箇所の避難所から計21名が結核の疑いがあるとされ、うち13名を保健センターもしくはバイロピテ診療所の医師による診察につなげることができた。喀痰検査より、3名が結核に罹患していると診断された。

【栄養失調児に関する活動】

6月に、UNICEFが26の避難所で暮らす約3,200名の6ヶ月以上5歳未満児を対象として調査を行った結果、127名が栄養失調と診断された。UNICEFは、応急処置として7月に栄養失調児に食料を配給し、その後、モニタリング・フォローアップ活動として8月24日から9月1日の間の6日間、前回栄養失調と診断された子どもの身長・体重測定、WHM値(体重・身長測定の結果から計算され、栄養不良の度合を示す値)算出、保護者への食事に関するインタビュー、保健教育を実施した。

当会は他の活動との兼ね合いもあって、8月24日、25日、31日の3日間、計11箇所の避難所での活動に参加した。当会が活動した避難所は以下の通りである。

・芸術学校 ・警察学校 ・モタエル教会 ・CARE事務所 ・ファトゥメタ神学院 ・メティアウト避難所 ・バリデ教会 ・ジャルディン避難所 ・バリデ神学院 ・レシデレカノッサ修道院 ・サンジョゼカレッジ

保健教育ではシェアが開発したフリップチャートやパネルシアターなどの教材を使用し、栄養に関することのみならず、栄養失調の原因となる下痢や環境衛生についても指導を行った。保健教育実施状況は下記の通りである。

また、栄養失調児が今後も引き続き近隣の保健センターにてモニタリング・フォローアップを受けられるよう、この活動には保健センタースタッフも参加し、モニタリング手帳へ現在の状況、次回受信日を記入し、母親に渡す作業を行った。

実施回数: 計17回
受講者数: 計29名(母親22名+子供7名)

 
4.事業完了後の維持・管理体制

当事業では、避難民の健康状態改善や病気の蔓延防止を目的とした活動を実施するなかで、事業完了後の継続性も重視してきた。カウンターパートであるバイロピテ診療所や協力関係にあった国際機関やNGOのスタッフを対象に、能力向上を目指したトレーニングおよびOJTを実施し、事業完了後も彼ら自身で活動を実施していけるよう知識、技術、手法の移転を行った。

また、当会はこれまでに開発してきたフリップチャートや劇、歌、ゲーム、パネルシアター等を使った様々な保健教育教材手法や教材を国連機関や他のNGOと共有した。

国連機関やNGOが独自に開発、作成した複数の手法、教材、ポスター等を同時に使用した場合、同じ内容について言及しても、言い回しや表現の仕方、挿絵、デザイン等によって避難民に伝わるニュアンスが微妙に変化する。そこで混乱や誤解を避けるべく、一つの保健教育トピックに関して、可能な限り統一された手法、教材、ポスターを使用することを心がけた。

さらに、当会はこれらの手法、教材の使用方法をまとめたマニュアル冊子も配布し、必要時には国連機関や他のNGOスタッフがそれらを正しく使用できるようトレーニングを実施してきた。

今後は、バイロピテ診療所や当事業で協力関係にあった国連機関やNGOが、当事業で培った知識、技術、手法を活かしながら、関係諸機関、団体と協力して活動の維持・管理を行っていく。

5.日本国内外での広報

当事業について、日本国内では当会の機関紙「ボン・パルタージュ」や当会ウェブサイト上で広報した。また、9月に当団体の入っているビル全体を開放し、他のNGO団体と共同で実施した「NGOまつり」、10月に日比谷公園で開催された「グローバルフェスタ」においても、東ティモールの状況および当活動について話をする機会を得た。

東ティモール国内では、現地の新聞に当事業に関わる当会日本人スタッフが取り上げられた。